「変わっていく時間」に希望を持って
~第75回“社会を明るくする運動”に寄せて~

皆様方におかれましては、法務省が主唱する“社会を明るくする運動”(通称“社明”)に対し、日頃から多大な御協力を賜り、心より御礼申し上げます。
本運動は、国民の皆様が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの立ち直りについて理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築く(このような犯罪や非行からの立ち直りを支援する活動を「更生保護」といいます)ための国民運動です。
本運動は、戦後の荒廃した社会の中で街にあふれた子どもたちの将来を危惧していた東京・銀座の商店街の有志が、更生保護の理念に共鳴して開催した「犯罪者予防更生法実施記念フェアー(銀座フェアー)」が一つの起源であると言われています。昭和26年から法務省が主唱し、今年で節目となる75回目を迎えました。
本稿では、本年における第75回“社会を明るくする運動”について紹介します。
第74回運動では、「想う、ときには足をとめ。」をメインコピーとし、「待てない社会」「ファスト文化」などと揶揄される、高度に情報化された現代社会において、「待つこと」「時間をかけること」の価値に焦点を当てました。
更生保護の世界では、「待つ時間」とは、人が「変わっていく時間」であり、人を信じて「寄り添う時間」です。この更生保護の真価ともいえるテーマを掲げ、第74回の広報を展開する中で、スピード、効率が求められる現代において、更生保護に関わる方々は、どうして諦めずに「寄り添い」「待つ」ことができるのだろうか…という疑問が生じていました。
この疑問の答えを求めたとき、ひとつのキーワードが浮かびました。それは、「希望」です。すなわち、更生保護に関わる方々が「待てる」のは、立ち直ろうとする人に光を見出し、その将来に見える希望を信じているからこそできる行為なのではないか。ここに更生保護の魅力がある。そのように私たちは考えました。
第75回のメインコピーは、「Time with Hope - 進む、希望とともに。」。
立ち直ろうと努力する人たちと、そんな彼らが変わっていくことを願って、寄り添い、ともに歩み続ける更生保護ボランティアの姿・時間に焦点を当てました。立ち直りを支える方々の想いを広く知っていただくことにより、もっともっと更生保護の魅力を感じてもらいたいと思っています。
第75回運動のコンセプトとして掲げたポイントは次の3つです。
(1) 将来の「希望」に向けて「人が変わっていくことを待つ」という更生保護の活動理念を通して、国民の各層に向けた更生保護ボランティアの存在の一層の周知を図る。
(2) より広い層に“社会を明るくする運動”や更生保護ボランティアの存在とその活動を知ってもらうための多角的な広報を行う。
(3) 「国際更生保護ボランティアの日」の広報と“社会を明るくする運動”の有機的な連動を意識し、効果的な広報活動を目指す。
令和6年4月に開催された第2回世界保護司会議において、4月17日を「国際更生保護ボランティアの日」とする宣言が採択されました。「国際更生保護ボランティアの日」においては、今後とも一層、関係各国と力を合わせて、更生保護ボランティアの認知度向上に向けた取組を行ってまいります。
「国際更生保護ボランティアの日」について、詳しくはこちらのウェブページを御覧ください。
ポスター中央には、二人の女性が描かれています。左の女性は立ち直ろうと努力する人々を、右の女性は彼女に関わる更生保護ボランティアの方々をイメージしています。
更生保護ボランティアの方が、立ち直ろうとする人に希望を見出して寄り添い、その寄り添う時間・存在こそが、立ち直ろうとする人にとっての希望にもなる…そんな更生保護の営みが表現されています。無数に生まれ、美しく漂うシャボン玉は、内側から生まれ出る希望、未来への期待感を表しているかのようです。
ポスター・リーフレットのイラストは、第74回運動のイラストを描いていただいた水元さきの氏に引き続き御担当いただきました。同氏の鮮やかな色彩のやさしいタッチのイラストにより、今回の運動のコンセプトである「希望を持って寄り添う」ことの価値が最大限に伝わるものとなりました。
また、近年、動画による広報が主流となってきたことを踏まえ、CM動画の制作にも力を入れました。「希望を持って待つ」ことが、まさに待ってもらう側にとっての希望となり得ることを表現したショートムービーとなっています。
希望を持って待つこと・寄り添うことの価値が感じられるのは、犯罪や非行からの立ち直りだけに限ったことではありません。本動画を通して、更生保護の分野に馴染みがない方々にも共感いただくとともに、更生保護のエッセンスを感じていただきたいと思っています。
我が国は、他の先進諸外国と比べて、将来に希望を抱く若者が少ないことが指摘されています(こども家庭庁「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」)。
私たちは、本運動を通して、たくさんの人々に更生保護の意義や魅力が広がることを期待しています。しかし、それと同じくらいに、更生保護ボランティアの方々の想いに触れることで、地域に住む方々が明るい将来を思い、行動するきっかけになってほしいとも思っています。
これからも、人と人との温かな関係性の中でこそ人は変わっていけるという更生保護の理念を大切に、本運動の更なる発展に希望を抱きながら広報活動を進めてまいります。
本運動は各都道府県、市区町村において、地方公共団体、保護観察所、民間団体等が協力して、毎年、各地域に根差した特色ある活動を展開しています。特に、強調月間である7月中は、各地で様々な広報イベントや地域の方々と協力した活動が行われています。本運動が目指す立ち直り支援の輪に、是非御参加ください。
本年も、全国各地において、多様で豊かな運動が展開されますよう、皆様方の御協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
作文コンテスト
「“社会を明るくする運動”作文コンテスト」は、全国の小・中学生のみなさんに、日頃の家庭生活や学校生活の中で体験したことをもとに、犯罪や非行のない地域社会づくりなどについて、考えたことや感じたことを作文にすることで、この運動が目指すことを分かってもらうことを目的とし、第43回運動(平成5年)から毎年行っているものです。
和泉市におきましても、平成27年の第65回“社会を明るくする運動”から中央推進委員会、大阪府推進委員会の実施要項に基づき市内小・中学校の協力を得て実施しています。