“社会を明るくする運動”とは
皆様方におかれましては、法務省が主唱する“社会を明るくする運動”に対し、日頃から多大な御協力を賜り、心より御礼申し上げます。
本運動は、国民の皆様が、犯罪や非行の防止と犯罪や非行をした人たちの立ち直り(このような犯罪や非行からの立ち直りを支援する活動を「更生保護」といいます)について理解を深め、それぞれの立場において力を合わせ、犯罪や非行のない安全で安心な明るい地域社会を築くための国民運動として、全国各地で様々な取組が展開されており、本年で74回を数えます。近年においては、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、大規模な対面のイベントが制限されるといった影響もありましたが、動画コンテンツの配信やSNSの活用など新たなチャネルも活用して、地域の皆様のお力添えもいただきながら、運動を力強く続けてまいりました。
第71回(2021年)から第73回(2023年)までの3年間は、「#生きづらさを生きていく。」をキャッチコピーに掲げて本運動を実施してまいりました。誰もが抱えうる「生きづらさ」にスポットを当て、ポスターのキャッチコピーやストーリーに触れた方々が、どこかで共感してもらうことを意識して取り組み、結果として、数多くの反響をいただきました。
本年は、運動コンセプトや広報デザインを一新して展開してまいります。本稿では、本年における第74回“社会を明るくする運動”について紹介します。
1. 孤独・孤立や生きづらさは誰もが抱え得る問題であるということを共通理解とし、人と人が緩やかにつながる包摂的な地域社会を目指すこと
2. 「人は変われる」ということを信じ、人が「変わっていく時間」をポジティブなものとして、希望を持って受け止めること
3. 「希望を持って『立ち直り』を待つ更生保護ボランティア」の存在を更に周知すること
すなわち、孤独・孤立を始めとした「生きづらさ」は、犯罪や非行をした人だけが抱える特別なものではなく、誰しもがその当事者となり得ます。その上で、犯罪や非行のない明るい社会を築くためには、見守り、支え合う地域社会の実現が重要であり、更生保護の活動やそれに携わる保護司を始めとする身近な更生保護ボランティアの方々、そして地域社会におけるつながりが必要不可欠であると考えています。
第74回運動においては、これまでよりも一歩踏み込んで、地域の中で誰かが担わなくてはならない役割を果たし続けている保護司を始めとした更生保護ボランティアの活動にフォーカスし、その存在や活動に関心を持ってもらうための取組に力を入れてまいります。
更生保護ボランティアの存在や地域のチカラの魅力を広く伝えていくため、広報デザインの中核に据えたテーマが「時間」の概念です。
情報通信技術の急速な発達により、私たちのライフスタイルは大きく変化しました。一人ひとりがスマートフォンを手にし、指先一つであらゆることが実現可能になりました。先述した感染症との闘いもそれに拍車をかけ、私たちのコミュニケーションは“リアル”なものから、インターネットを介した“ニューノーマル”に取って代わりました。
これらの時代の移り変わりは、私たちの生活を飛躍的に便利にしてくれましたが、その代償として、Z世代に代表される若年層を中心として、「待てない社会」「ファスト文化」などと形容されるように、タイムパフォーマンス(時間対効果。いわゆる「タイパ」)を価値基準とし、「時間をかけること」や「待つこと」をネガティブなものとして評価する風潮も生まれました。
一方で、更生保護の世界では、立ち直りを「待つ」ことや「時間をかけること」は決してネガティブなものではありません。立ち直ろうと努力する人に希望を見出し、その立ち直りを信じ続けています。更生保護ボランティアの方々にとって、「待つ時間」とは、人が「変わっていく時間」であり、人を信じてともに「寄り添う時間」として、むしろポジティブなものと考えています。そして、その寄り添う時間・存在こそが、立ち直ろうと努力する人たちの精神的な支えとなり、人を更生に導く特別なモチベーションを生み出しています。
この考え方は、更生保護や“社会を明るくする運動”の真価として、高速化する現代社会にこそ一際光を放つものであると考えています。
“社会を明るくする運動”は各都道府県、市区町村において、地方公共団体、保護観察所、民間団体等が協力して、毎年、各地域に根差した特色ある活動を展開しています。特に、強調月間である7月中は、各地で様々な広報イベントや地域の方々と協力した活動が行われています。
まずは、これらの各地の活動を地域の方々に知っていただき、さらにはイベントに参加いただけるよう、積極的な情報発信を行ってまいります。昨年12月には、本運動の広報ツールとして、“社会を明るくする運動”ウェブサイト(https://www.moj.go.jp/hogo1/kouseihogoshinkou/syamei/)をオープンしました。本サイトを本運動や更生保護に関する情報発信の中核的ツールとして活用し、引き続きSNS等も効果的に活用し、一層の周知広報に努めてまいります。本運動が目指す立ち直り支援の輪に、ぜひご参加ください。
本年も、全国各地において、多様で豊かな運動が展開されますよう、皆様方の御協力をどうぞよろしくお願い申し上げます。
作文コンテスト
「“社会を明るくする運動”作文コンテスト」は、全国の小・中学生のみなさんに、日頃の家庭生活や学校生活の中で体験したことをもとに、犯罪や非行のない地域社会づくりなどについて、考えたことや感じたことを作文にすることで、この運動が目指すことを分かってもらうことを目的とし、第43回運動(平成5年)から毎年行っているものです。
和泉市におきましても、平成27年の第65回“社会を明るくする運動”から中央推進委員会、大阪府推進委員会の実施要項に基づき市内小・中学校の協力を得て実施しています。